統合報告書 2026

Business診断・ライフサイエンスドメイン

診断・ライフサイエンスドメインは、グローバルに、医療現場での高精度かつ迅速な診断やライフサイエンス研究の高度化と効率向上を支援しています。がん診断等に用いる病理検査機器・消耗品等を提供する病理事業、ライフサイエンス研究や医療を幅広く支える保存・培養機器や医療機関向けに体外診断薬・機器などを提供するライフサイエンス事業の2事業で構成されており、それぞれ開発・製造・販売を行っています。

売上収益全社比率36.2%

FY25 実績

売上収益

売上収益は、米国の機器需要が回復傾向は見えつつも継続して停滞、欧州の好調や為替の好影響はあるも、診断薬の販売減等により減収

売上収益
営業利益
営業利益

営業利益は、価格改定や生産体制見直し等の効果があり、第4四半期は大幅な増益。通期では減収影響が大きく、関税や本社機能見直し影響も含め前年同期比大幅な減益

  • 価格改定効果
  • 生産体制最適化等の合理化効果
  • 関連会社の区分変更によるその他収益 約5億円
  • 減収影響
  • 在庫削減影響
  • 関税影響約10億円
  • 本社機能見直しによる影響額12億円
  • 前年計上の一時収益6.3億円
営業利益率3.0%

ドメイン戦略

中村 伸朗

中村 伸朗

PHCホールディングス株式会社
常務執行役員 診断・ライフサイエンス
ドメイン長

成長・育成事業として経営資源を集中

営業利益率改善幅:7.1%(FY24~FY27)

ドメインの総合力を結集、グループの成長を牽引する存在に

2025年度の診断・ライフサイエンスドメインは、米国における関税及び機器需要停滞の影響を受け、業績面では厳しい一年となりました。一方で、欧州は堅調に推移し、米国においても下半期には製薬・バイオ医薬品向けを中心に大型案件を獲得するなど、需要回復の兆しが見え始めています。そのような状況のもと、中期経営計画2027における多くの施策を実施しました。販売面では、ドメイン内3事業の国内営業・CSを統合し、更なる売上拡大に向けた体制の再構築を行いました。また、欧州と中国においても多くの協業をスタートさせました。製造面では、病理事業の英国工場からインドネシア工場への生産移管による原価力強化に取り組むと共に、中国国産優遇施策への対応として病理事業の中国工場の活用を拡大させるなど、ドメイン全体で最適化を着実に進めてきました。加えて新製品では、細胞・遺伝子治療(CGT)領域において、2024年度上市のライブセル代謝分析装置「LiCellMo™」に続き自動培養装置「LiCellGrow™」を発売、また、移動式免疫発光測定装置「パスファースト」の改良版や、超低温フリーザー、CO2インキュベーターの新機種も投入しました。

2026年度もドメインの総合力を結集し、更なる成長の加速を図ります。まず、バイオメディカ事業部と診断薬事業部を統合し、ライフサイエンス事業部を発足させました。これにより、営業、製造、オペレーションの各機能における最適化と生産性向上をさらに進め、事業基盤をより一層強固なものとしていきます。また、販売面と製造面のドメイン最適化の継続に加え、グループ全体の技術開発を推進する「コアテクノロジー研究所」と連携し、コア技術を活用した新たなソリューション開発も進めます。

中期経営計画2027において、当ドメインはグループの成長を牽引する存在として位置付けられています。私たちが目指す姿は、「より的確・早期・簡便ながん診断を実現するイノベーター」、そして「がんの先端治療法の早期普及を実現するアクセラレーター」です。その実現に向け、ドメイン一体での事業基盤強化やR&Dの推進等を着実に実施しています。がんの「早期診断」「個別化医療」、さらには細胞・遺伝子治療などの「新しいモダリティ」を支えるソリューションを開発し、新たな価値を創出し、世界の医療の発展に貢献していきます。

病理事業

エプレディア

市場環境・見通し

病理用検査機器・消耗品市場の推移
病理用検査機器・消耗品市場の推移

出所:自社調べ

市場環境
  • がん患者数の増加に伴い、病理用検査機器市場は拡大傾向
  • ワークフローの自動化、遠隔医療による連携、AIを活用した診断、さらなる効率向上を目的として、デジタル病理を導入する検査機関が増加
  • 規制当局の承認や公的な資金支援により、米国、欧州、中国における高速デジタル病理ソリューションの導入が加速
今後の見通し
  • がん患者の増加と検査の複雑化に伴う病理検査の需要増により市場拡大は継続する見込み
  • ワークフロー効率化の需要により、消耗品・検査機器は4%成長となる見通し
  • 検査量増加と人員不足を背景に、病理検査室ではワークフロー最適化や高速スキャンソリューションへの需要が拡大
  • 低価格帯メーカーの進出により価格競争は激化

主要な製品・サービス

病理消耗品
85年にわたり高品質・高精度の消耗品を業界屈指の幅広い製品数で提供
病理消耗品
病理機器
病理ワークフローのあらゆる工程を支える高品質・高精度の機器を提供
病理機器
デジタル病理
効率・正確性・高処理が必要な現代の検査室を業界最大級の製品で支援
病理機器

戦略・目標

戦略
  • ティッシュープロセシング、デジタル病理、環境に優しいレーザー印字機器を成長領域として注力
  • 品質改善とコスト競争力の強化
  • 業務効率及び生産能力の向上
  • 環境に配慮した持続可能な製品開発を加速
目標(FY24-FY27)
売上CAGR:4.8%

当社がリーダーでもある消耗品・検査機器市場の市場成長率を上回り、戦略的成長分野でシェア拡大を目指す

事業戦略

スティーブン・ライナム

スティーブン・ライナム

PHCホールディングス株式会社
執行役員
エプレディアホールディングス
社長

エプレディアは、組織処理、染色、スライド印字、消耗品、デジタル病理、及びAIを活用した画像管理を網羅する統合ソリューションを通じて、精緻ながん診断を支えるリーディングカンパニーです。当社は、より効率的で正確ながん診断へのニーズの高まりを受け、デジタル病理関連ソリューションを拡充しています。

デジタル病理の導入拡大に伴い、高解像度の全スライド画像化、遠隔での病理所見の検討、ワークフローの標準化、さらにはAIを活用した分析が可能となり、検査室での業務は変革を遂げつつあります。エプレディアのE1000 Dxデジタルパソロジーソリューションは、1日最大1,500枚のスライド処理が可能な高速スキャン性能に加え、高度な品質管理機能及び既存システムとの高い互換性を備えています。

当社は、検査室のワークフロー効率化と診断の精度向上に寄与するため、ハードウェア・ソフトウェア、自動化、AI分野での提携など、デジタル病理ソリューションへの投資を継続します。3DHISTECHやMindpeakなどとの戦略的提携を通じて、AIによる画像認識を含むデジタル画像処理分野の強化を進めています。

また、自動化や検体トレーサビリティの強化、環境負荷の少ない技術、及び消耗品のリカーリング収益拡大により、卓越した事業運営の実現にも注力しています。独自の技術とグローバルな販売体制を強みに、エプレディアは病理ワークフロー全体を支えるソリューション企業として持続的な成長を実現していきます。

私たちの「精緻な技術」

Epredia E1000 Dx ―デジタル病理の未来を切り拓く
エプレディアE1000 Dxデジタルパソロジーソリューションは、先進的な画像技術とデジタルワークフロー分野における当社の強みを象徴する製品です。従来のスライドガラスを高品質なデジタル画像へ変換し、業務効率、情報連携、及び診断プロセスの改善に貢献します。当社の自動化機能、高品質な画像、AI対応への継続的な取り組みは、業界での高い評価に繋がっています。特に、E1000 Dxデジタルパソロジーソリューションは、2026年メドテック・ブレークスルー賞において「最優秀新診断技術ソリューション」に選出されるとともに、病理診断でのAI活用標準化を推進するEMPAIAインターナショナルによるスキャナーのベンチマーク評価でも優れた性能(画像品質、処理速度、相互運用性)が認められました。
本ソリューションの中核を担う画像管理システム(IMS)は、さまざまな検査室や医療機関を結ぶネットワーク間で、デジタル病理画像の安全な保管・管理・共有を実現します。E1000 DxとIMSを統合したデジタル病理ワークフローを構築することで、病理医による症例アクセスの迅速化、遠隔での診断支援、そして増加する大量の画像データを効率的に管理できます。お客さまにとっては、生産性向上、柔軟なワークフロー運用、さらにAI診断やデジタルヘルスケアの普及に対応可能な、将来を見据えたプラットフォームを実現します。

ライフサイエンス事業(旧バイオメディカ事業)※

  • ※ 2026年4月1日より、バイオメディカ事業と診断薬事業は統合し、ライフサイエンス事業となりました。
    詳細は「PHCグループの体系図」をご参照ください。
PHC

市場環境・見通し

ライフサイエンス機器市場の推移
ライフサイエンス機器市場の推移

出所:自社調べ

市場環境
  • 足元は各地域における景気減速や投資抑制の影響が残るものの、主要地域で復調の兆しが見られ始めている
  • 製薬やCDMOでは省エネ機器への入替需要や取引企業に対するESG対応要請が顕在化している
今後の見通し
  • CGTを含む先端治療技術開発や製造プロセスへの重点投資が継続しており、2027年に向けて市場の成長加速が期待される
  • 細胞を用いたライフサイエンス研究市場の拡大により、超低温フリーザーやCO2インキュベーターなどの需要は中長期にわたり安定的な成長が見込まれる

主要な製品・サービス

超低温フリーザー
検体保存に重要な高い温度安定性、省エネ性能と使いやすさで研究支援
超低温フリーザー

出所:自社調べ

CO2インキュベーター
独自の加湿制御機能と汚染防止機能により、細胞の培養効率と再現性を向上
CO2インキュベーター

出所:自社調べ

自動培養装置
細胞の代謝変化を可視化するIn-Lineセンサの値に基づき、自動で培地を交換。細胞の培養環境を常に最適化し、細胞品質の向上と、製造ロスの削減を通じた効率化やコスト低減に貢献
自動培養装置

戦略・目標

戦略
  • 省エネをはじめとした環境に配慮した製品やIoTによる付加価値創出など、差別化技術を有した商品ラインアップの拡充と販売拡大
  • ライブセル代謝分析装置「LiCellMo™」、自動培養装置「LiCellGrow™」をはじめとしたCGT領域製品の開発・販売の推進
目標(FY24-FY27)
売上CAGR:5.6%

事業戦略

高魚 力

高魚 力

PHCホールディングス株式会社 執行役員
PHC株式会社 代表取締役専務

バイオメディカ事業の柱である超低温フリーザーやCO2インキュベーターは、ライフサイエンス市場における研究開発を支えるファンダメンタルな商品です。各地域での設備投資回復の動きを追い風に、安定した品質と性能を備えた商品ラインアップを通じて、研究者の皆さまが安心して研究を行える環境を提供してまいります。

根治が期待される細胞・遺伝子治療(CGT)領域は、製薬・CDMO各社の製造投資拡大を背景に高い成長が見込まれます。当社のコア技術を活かした代謝分析装置や自動培養装置の市場浸透を図るとともに、パートナー企業との協業を通じてCGT製造プロセスの課題解決に貢献するソリューションプロバイダーとしての地位確立を目指します。

さらに、中期経営計画2027のもと、診断・ライフサイエンスを重点領域と位置づけ、収益基盤の強化と成長投資を両立しながら、より多くの方々が先端治療を受けられる環境づくりに貢献します。

既存事業の安定的な成長を基盤とし、新規領域でのソリューション拡大とIoT技術を活用した付加価値提供を組み合わせることで、ライフサイエンス市場のさらなる発展をリードしてまいります。

私たちの「精緻な技術」

現開発部門責任者が語る、長年の蓄積が生む精緻なコア技術力

私は入社以来、バイオメディカ事業部の製品・技術開発に携わってきました。私の目から見た、当事業部の精緻な技術の歩みについて説明したいと思います。

バイオメディカ事業部は、1966年に家電メーカーの一部門として日本のライフサイエンス機器市場へ参入しました。当時は市場規模も小さく、海外メーカーが主流でしたが、国内市場の成長とともに当社事業も国内からグローバルへと着実に拡大し、現在では超低温フリーザー等の製品で国内シェアNo.1/グローバルシェアNo.2※を獲得するに至っています。

事業開始当初は、既存の安全設計技術をベースとしながらも、対象装置の特殊性ゆえに多様な課題に直面し、多くの失敗と試行錯誤を重ねてきました。その過程ではサプライヤーとの密接な連携のもと、部品レベルからの改良と品質向上を積み上げるとともに、製造工程や検査体系を整備し、基礎技術から製品化に至るまでの技術基盤を確立しています。さらに、製薬・バイオテックの研究者をはじめとする、高い専門性と厳格な評価基準を持つユーザーの要求に応え続けることで、精度・再現性・信頼性といった性能要件を磨き上げてきました。

これらの継続的な改善活動は、開発設計にとどまらず、生産技術や製造プロセスにも展開され、全体としての品質保証力の強化に繋がっています。

また、当社はこのような技術の深化に加え、新たな分野に挑み続けるチャレンジ精神を大切にし、技術領域の拡張と価値創出に取り組んできました。既存技術の高度化と新規技術への挑戦を両輪とすることで、環境変化や顧客ニーズの進化にも柔軟に対応しています。

こうして培われた精緻な技術は、研究現場において安定したデータ取得と高い再現性を実現し、顧客の研究成果の信頼性向上に貢献しています。今後も当社は、長年の蓄積と現場起点の改善力、そして新たな分野に挑み続けるチャレンジ精神を融合させ、ライフサイエンス分野の発展を支える技術の進化に取り組んでいきます。

  • ※ 出所:自社調べ
小林 晋

小林 晋
PHC株式会社
ライフサイエンス事業部
バイオメディカ事業グループ
LSソリューション開発部 部長

ライフサイエンス事業(旧診断薬事業)※

  • ※ 2026年4月1日より、バイオメディカ事業と診断薬事業は統合し、ライフサイエンス事業となりました。
    詳細は「PHCグループの体系図」をご参照ください。
PHC

市場環境・見通し

IVD(体外診断薬)市場の推移
国内CRO市場の推移

出所:自社調べ

市場環境
  • IVD
    慢性疾患や感染症の有病率と発症率の増加に伴い市場は拡大
  • インジェクター
    バイオ医薬品の普及により市場は成長
今後の見通し
  • IVD
    医療リソースが限定的な環境でも疾患の早期発見に寄与することから途上国中心にさらなる市場拡大の見通し
  • インジェクター
    在宅自己注射剤が増加する中で、電動インジェクター市場が成長見込み

主要な製品・サービス

診断薬
血液凝固・線溶分野をはじめ、血液中の成分を測定する体外診断用医薬品(診断薬)を幅広く展開
診断薬
診断機器
移動式免疫発光測定装置は高感度で迅速に測定。全自動血液凝固検査システムなどで大規模機関にも対応
診断機器

戦略・目標

戦略
  • 試薬事業の強化と加速
  • 凝固・線溶領域の強みを活かし、がんを含めた各疾患における合併症リスクの高い「血栓塞栓症」に関わる循環器系領域での促進を図る
目標(FY24-FY27)
売上CAGR:5.9%

事業戦略

高魚 力

高魚 力

PHCホールディングス株式会社 執行役員
PHC株式会社 代表取締役専務

診断薬事業部では、試薬事業を強化し、成長を加速していくことを目標としています。

主力製品の一つである移動式免疫発光測定装置「パスファースト」は発売から20年を迎え、日本国内及び、米国・欧州・アジア・中東・中南米など約50の国と地域の医療現場で迅速な検査に貢献してきましたが、2026年3月にリニューアルし、日本で販売を開始しました。今回、リニューアルした「パスファースト」では操作画面の大型化や直感的な操作を実現する画面デザイン(GUI)に刷新し、試薬のスムーズな出し入れを可能にする大開口ドアを採用しました。さらに、内蔵バーコードリーダーと、装置状態が可視化できる状態表示ランプを搭載し、より一層使いやすさを重視しました。今後は、欧米やアジア諸国においてもリニューアルした「パスファースト」の販売を目指して取り組みます。

今後も、診断薬事業部が保有する試薬開発技術やバイオセンシング技術、試薬や簡易迅速検査機などのコア製品を基盤とした新しい価値の創造に取り組んでまいります。

私たちの「精緻な技術」

精緻な技術で実現したsCLEC-2測定試薬開発
診断薬事業部では、凝固・線溶領域で培った精緻な技術基盤を活かし、血小板活性化マーカーである可溶性C型レクチン様受容体(C-type lectin-like receptor 2:sCLEC-2)測定試薬を開発しました。
凝固・線溶試薬における「精緻な技術」とは、体内の血液反応を試験系で正確に再現し、狙った物質だけを確実に捉え、結果のばらつきを抑えるための設計技術です。例えばDダイマー※では特異性の高い抗体で目的物質のみを検出し、PT※やAPTT※では試薬組成を調整して安定した凝固反応を引き出します。これらにより、再現性の高い測定性能を実現し、臨床で信頼できる検査が可能になります。
本試薬は山梨大学と共同で開発し、全自動臨床検査システムSTACIA®専用試薬として製品化したものです。sCLEC-2は血小板活性化を反映するバイオマーカーとして、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈血栓症の早期把握やリスク評価への応用が期待されています。従来マーカーが抱えていた採血・検体取扱い上の制約を克服し、通常のクエン酸加血漿で簡便に測定可能とした点に特徴があります。2025年3月には日本で認定検査用試薬として上市し、臨床データの蓄積とともに体外診断用医薬品としての承認取得を目指しています。脳梗塞や心筋梗塞などの動脈血栓症に加え、幅広い疾患領域での応用拡大を通じ、「血栓塞栓症」に関わる循環器系領域での事業のさらなる成長に貢献していきます。
  • ※ 血液凝固検査の種類
新谷 雄一

新谷 雄一
PHC株式会社
ライフサイエンス事業部
診断薬事業グループ
技術開発部 統括課長